『スピーチの天才100人』

サイモン・マイヤー、ジェレミー・コウルディ

池村千秋・訳 CCCメディアハウス

アメリカ合衆国を形成したのは「我々国民」であると、

合衆国憲法の前文に書かれています。

「我々白人男性市民」でもなければ、

「我々男性市民」でもありません。

私たちが合衆国を形成したのは、

人々に自由の恩恵を新たに与えるためではなく、

人々が本来もっている自由を保障するためだと、

憲法の前文はうたっています。

現在と未来の国民の半分にだけ自由を保障するためではなく、

すべての国民に、

男性だけでなく女性にも自由を保障するために、

合衆国はつくられたのです。

──スーザン・B・アンソニー(女性参政権運動指導者)

ボリンジャーはショッキングな事実を聴衆に示すことによって、

自分の主張に説得力をもたせた。

「(人権擁護団体の)アムネスティ・インターナショナルによれば、

(イランでは)今年に入ってこれまでに210人が処刑されました……

この七月と八月だけで、最大30人が絞首刑に処せられました。

もっと自由で民主的な社会を築こうとする動きを

(イラン政府が)押しつぶそうとしたことは、

大きく報道されたとおりです……

最初に、はっきり申し上げておきたい。

大統領、あなたは狭量で冷酷な独裁者の条件をすべて満たしている」

──リー・ボリンジャー(コロンビア大学学長)

さらば、友たちよ。

諸君の一人ひとりをこの胸に抱き締められれば、

どんなにいいだろう。

──ナポレオン・ボナパルト

ブロディはアカデミー賞授賞式で、

短いが効果的なスピーチを行った。

映画の主人公であるシュピルマンへの称賛を忘れず、

この作品に出演する機会を与えられたことへの感謝の気持ちを

表現する一方で、踏み込んだ発言をして、

戦場にいる兵士たちのことを聴衆に思い出させた。

スピーチの終盤で、ブロディはこう述べた。

「(ニューヨークの)クィーンズ地区出身の友人が

いま兵士として、クウェートにいます。

トミー・ザブロビンスキーという男です」

──エイドリアン・ブロディ(アメリカの俳優)

ノーベル文学賞を受賞した文才の持ち主でもあるチャーチルは、

力強い導入、引用や修辞疑問の活用、言葉の言い換えなどの

文章技術を演説でも駆使した。

演説を総括し、

聞き手に強い印象を残す言葉で演説を結ぶことにも気を配った。

以下は、一九四〇年六月一八日に行った

下院演説の締めくくりの言葉だ。

「覚悟を決めて使命を遂行し、堂々と振る舞おうではないか。

大英帝国と英連邦が千年先まで続いたとしても、

その時代の人々にこう言われるように。

このときこそイギリスの最も立派なときだった、と」