神智学5

神智学の理論と思想編集背景編集ブラァツキーに始まる近代神智学の背景となっているのは、硬直化したキリスト教と、霊を排して物質のみに根拠を求めようとする自然科学へ反発である82。神智学は、自然科学が台頭した時代に、科学の検証に耐えうる新しい宗教として打ち立てられた83。ブラァツキーはしばしば超常現象を見せ、それはほとんどは奇術まがいのトリックであったが、人の耳目をひきつけた83。彼女自身の不思議な魅力と超常現象への興味があいまって、神智学は注目された84。

理論思想編集

シークレットドクトリン

万物を構成する宇宙的生命すなわち絶対的本質は、万物を流出させる根源的な原理であり、それは精神と物質、光と闇、男性と女性、能動性と受動性といった区別を越えたところにあるというのが基本教義である85。ブラァツキーは同時代に流行した心霊主義霊媒として活動していたが、心霊主義の単純な霊魂論に異議を唱え、物的証拠とは無縁の霊魂の存在と、ユダヤキリスト教の主流では否定されていた死後の再生輪廻転生を確信し11、身体的な進化の基礎となる霊的な進化の理論を唱え、人間は輪廻の連鎖を通して起源へ旅する神性の輝きが具現化したものであるとみなした76。数十億年もの進化の果てに神に近い存在に近づくことができるとし、すべての心霊的自我霊魂はニルァーナ涅槃に到達し、宇宙的神的根源に至るとしたこのような涅槃の説明は、仏教ともヒンドゥー教徒とも異なっている8687。また、新しい心霊学としてインド思想の要素を取り入れ88、連続した生の環境を統括するものとしてカルマの法則を提唱した76。その理論の基礎には、マクロコスモス宇宙とミクロコスモス人間との照応コレスポンダンスという西洋伝統思想がある20

神智学協会はキリスト教の神のような人格神を立てない89が、フレデリックルノアールは、神智学は一種の有神論と一種の個人的自我への信仰であると述べている90。岩本道人は、シークレットドクトリンにおける真にオリジナルな教説は、聖なる数字とされてきた七を用いたオカルト進化論の単位とも言える周期ラウンドと、根源人種ルートレースの神秘的人種論の二つだけであると述べている70。岩本は、シークレットドクトリンの特質をなすオカルト進化論は、その二つの理論を除いてサンスクリット語の装飾を落とせば、一昔前のアルフォンスルイコンスタン17以来の西洋近代オカルティズムの伝統であるカバラの上に成立しており、その独特の人種論もフランス人オカルティストたちに起源があると指摘している91。吉永と松田は、フランスの秘教家サンティーフランス語版などとの類似が指摘されるものの、極めて独自な思想であると述べている92。

岩間浩は、神智学および神智学協会の特質を、次のようにまとめている93。

神智学は知恵の科学である。人類を一つの同胞と見、その進化発達を宇宙史的な観点から捉える霊性進化論英語版。宗教の源は一つであり、各宗教は最高の自覚へと至る門であるとし、それぞれの宗教の比較研究をする。すべての人生命は神性を宿すとみる立場神性の原理、すべての人を同胞とみる立場から、宗教宗派、人種民族、国、性、身分、職業、貧富などの違いによって人を差別することを禁じる。自然及び人に秘められた真理を探求する。人とは人生という学校で学びつくすまで生まれ変わりを繰り返しつつ、進化の道を辿る再生誕の法則とし、生命の不滅を説く。進化の過程で深い自己解放真の自由に到達し、生まれ変わって学ぶ人生学校を卒業した存在超人、覚者を認め、彼らによる人類への慈悲の保護援助の大計画争いのない平和な社会を創造する大計画を認め、彼らを教師として励む弟子道を、自覚的に歩もうと心がける。そして自己訓練的に高い倫理的な生き方を目指す具体的には、菜食し、酒や薬物を慎み、理想的にはそれらを断ち、規律ある瞑想的生活を送るよう求められる18。特に心の純粋性、愛、高貴性、正義、公平、寛大、誠実、無執着、自由といった内面性を重視\xA4

垢襦◦佑了廚辰燭蟾圓辰燭蠅垢觜坩戮呂垢戮同⎿茲鳳洞舛魑擇椶掘△笋❹討修侶覯未魎△蠎茲襯ɓ襯泙遼‖А∋廚い魎泙狒瓦討旅坩戮郎醉僂❹△譴佝榛醉僂❹△觝醉冏榛醉僂遼‖Г叛發咩8渋紊離ɓ肇螢奪器飢颪蓮▲屮薀.張①爾涼璜遒涼羶瓦箸覆觴臘イ禄灝⑱鯤詎任△蝓▲罐瀬箒汽⑤螢好閥汽ぅ好薀犇気涼棒㌧Ľ平世悗糧稟修魎泙鵑任Ľ蝓▲劵鵐疋ァ雫気諒譴覆訖世判灝㌧Ľ米舛亮汰¤鵬鶺△垢襪海箸鮨佑傍瓩瓩燭伐鮴發靴討い\xEB94。この精神はフェミニズム運動の先駆者であった後継者アニーベサントに、さらに現代のウイッカや女性の霊性に受け継がれ、現代の父権的キリスト教に対する闘争を続けていると述べている94。

思想の3つの柱編集

神智学の鍵

ブラァツキーは神智学の鍵(TheKeytoTheosophy)において、折衷的神智学19の思想の柱は次の三つであるとしている95。

全宇宙の根底には、一つの絶対的で人智を超えた至高の神霊や無限の霊力が存在しており、見えるものも見えないものも含めた万物の根源になっている、という思想。普遍的な魂からの放射である人間は、その至高の神霊と同一の本質を共有しているがために初めから永遠で不滅である、という思想。神聖な作業を通じて神の働きを実現すること。協会の3つの目的編集神智学の鍵における協会の柱は次の3つである55。

人種や肌の色や信仰による差別のない、人類の普遍的な友愛の核となること。アーリヤ語およびその他の言語で書かれた聖典、並びに世界の諸宗教と諸科学の研究を奨励し、古代アジアの、特にバラモン教、仏教、ゾロアスター教の哲学作品の重要性を証明すること。自然の隠された神秘、わけても人間に潜在する心霊的、精神的な力を、可能な限りあらゆる局面で、深く追及すること。西洋エソテリシズムの研究者ワウターハーネフラーフ英語版は、ここでいう科学はオカルト科学、哲学は隠秘哲学、自然の法則はオカルト的ないし心霊的な自然の法則であり、比較宗教は、ヘルメス主義者の永遠の哲学を模範とする原始的伝統の解明が期待されていたと述べている96。

取り入れられた宗教思想編集神智学協会の神智学は、西洋伝統思想に仏教など多様な宗教思想を折衷して作られた。マハトマ秘儀参入者が伝承してきた教えは、様な宗教や神秘思想とオカルトの源泉であり、真理はそれらのなかにも断片として表現されているが、神智学はその教えを純粋に復原したものと主張される9798。

神智学では、古代エジプト神秘主義、ヘルメス思想、ギリシア哲学、キリスト教、新プラトン主義、グノーシス主義カバラ、ェーダ、バラモン教ヒンドゥー教アドァイタェーダーンタ、ヨーガを含む、仏教特に、チベット仏教を含む北伝仏教、ゾロアスター教、魔術、錬金術占星術心霊主義、神話、フリーメーソン、薔薇十字団などから様な文脈の中で引用が見られるが、それらの知識のなかから、曇りのない秘儀を抽出することで叙述されたものとされる97。

インド

とは言っても、すべての宗教を同列とみなしたわけではなく、ユダヤ教は忌まわしい代物で好意的な引用もある、キリスト教はイエスを除けば何の値打ちもなく、イスラム教も数人の神秘家を除けば同様であるとし、その叡智が宿るのは人類の魂のゆりかごインドであるとした99。

特に仏教への偏愛が著しく、もっとも完成されたものと判断した99。ただし、その仏教は、大衆の間で実践され学者が研究してきた顕教的な外面的な仏教ではなく、秘儀伝授を受けたもののみに伝えられてきた秘教的仏教であり、彼らの言う顕教的な仏教には重大な誤りが含まれており、無学な大衆向けのものであるため、宇宙の意味や人間の運命にかかわる究極の英知は含んでいない、という100。

初期の神智学ではキリスト教は厳しく排斥されたが、のちに後継者のアニーベサントは、ブラァツキーら先輩たちの教え、特にキリスト教に関するものを修正し、表向きのキリスト教の背後に由緒正しい秘教的なキリスト教が存在するとしてキリスト教を東洋思想と同列に並べた101。この戦略で、多くのキリスト教徒が神智学に引きつけられるようになった101。

ブラァツキーは、伝統的な神智学の大家ヤーコプベーメに申しわけ程度に言及している102。イギリスの小説家エドワードブルワーリットン初代リットン男爵は、友人のエリファスレィの理論を焼き直したオカルト小説を書いているが、このブルワーリットンからも直接影響を受けている103。また、神智学を提唱する以前の若い時にフランスのパリで過ごした際、霊の進化と生まれ変わりを唱えるスピリティスムを提唱した霊媒教育者アランカルデックのグループに足しげく通っていた104。

これらと進化論などの新しい知見を折衷して、ブラァツキーは万物の一元性、宇宙や文明や人種の周期的な発生と衰退、カルマと普遍的な因果応報、再生輪廻転生、太古の文明、超能力、高次の意識、原子や鉱物や惑星の進化、生命体の進化に伴う天体間の移動などを説いている。

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